北米のハウスパーティがヒッピー過ぎた。

2017/04/22

 

匠です。

 

いきなりですが皆さん、

 

"ハウスパーティ"

 

と聞くとどの様なものが頭に浮かびますか?

 

僕は正直、パーティは家の中ではなく、

 

外で場所を借りたり、食事をケータリングなどして、

 

大々的に行うものだと勝手に思い込んでいたので、

 

家で行うものだとは思ってもいませんでした。

 

"ハウス"内での"パーティ"なので、

 

日本でいう所の、親戚のおじちゃんなど集まりみんなで長テーブルを囲い、

 

お寿司とか一升瓶を飲んだりする、新年会の様なものなのかな?

 

それとも、同じマンションにすむご近所さん達と

 

家の庭に集まり、自家製の食べ物を持ち寄ったり、

 

母親、父親同士が日頃の鬱憤を聴いて同情し合ったり、

 

何故ここにいるかも分からず子どもたちは僕の愛犬ルーシィと狂喜乱舞したり...

 

その様な、のほほんとした映像が、頭に流れます。

 

 

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※あくまでイメージです。

 

 

しかし!

 

今夜誘われたハウスパーティは、寝起きで伺えるようなものではない。

 

ある程度「今夜は弾けるぞ」、と意気込んで向かわないと

 

少し参ってしまうような、迫力満点のものでした。

 

そんな、僕の初めての米国でのハウスパーティの様子を書き下ろします。

 

 

4月22日 土曜日

 

大学で知り合ったマレーシア人の友人、シャム君から連絡が。

 

「今夜、ハウスパーティでライブをするので来ないか?」

 

彼のインド太鼓(タブラ)が凄いと噂には聞いていたが、

 

まさかハウスパーティでそれを聴くことになるとは思ってもいなかった。

 

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インド系マレーシア人のシャム

 

 

答えはもちろんYES。ノアとアブドゥル、この前カラオケバーに一緒に行ったサム、そして留学先が同じくワシントン州だった友人のシノちゃんと5人で向かうことに。

 

 

 

エバレット市を出発したのは夜6時頃。

 

少し北のアーリントンという街で韓国料理屋を営むサムの実家に少し立ち寄り、腹ごしらえをしたところで更に北に在るヒッピータウン「ベイリンハム」へ向かう。

 

 

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サムのペット、フェレットたち。

 

エバレットからは車で約一時間半、用事がない限り、滅多にそこを訪れることはありません。

 

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夜中に調べ、空いた道路だと一時間だと表示されました。

 

シャムから送られた住所が近づいてきた。

 

その頃午後8時近くになっており、街灯1つない道が続く。

 

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空は明るいが道は暗い。

 

目的地が近づいてきたので、車の窓を開けると、

 

人なのか、甲高い叫び声が聞こえてきた。

 

「これは恐ろしい夜になりそうだ」

 

わくわくと、不安が背中を煽る。

 

明らかに車が多く停められた一軒家を見つけたので、

 

僕らも他の車同様にそこへ停める。

 

もちろん、シャム以外に知り合いはいない。

 

車の周囲、駐車場内を走り回る大学生たち。

 

「まずい、かこまれた」

 

そんな状況にも関わらず、アブドゥルは外へ出て

 

「あー、腰いたっ」

 

と背伸び。

 

ノアも続けて外へ出て、既に外の輩たちと挨拶を交わしている。

 

そうか、導入が大事だ。と続けて僕、シノ、そしてサムも外へ出る。

 

僕らもたじたじに挨拶を交わしつつ、その場しのぎの会話を重ねていると、

 

「お~よく来たね~」とシャムくんが現れた。

 

彼、完全に目がいってる。既に何本か吸っているのだろう。

 

そういえば、車を出るなり、大麻のにおいが家の周囲全域に立ち込めていた。

 

「そうか、こういうパーティか」

 

僕は、その時察しがついて覚悟を決めていたが、

 

その頃アブドゥルは

 

「無料で吸えてラッキー」

 

と言わんばかりに、その場の人らに吸わせもらい始めている。

 

ノアは吸わない、僕も、サムも吸わない。

 

シノちゃんについては分からない。

 

ので、とりあえずそろそろ始まるらしいライブ会場へ向かう。

 

その会場は、四角い箱の様な形で...なんとシャッターを開けるとそれは、車庫であった。

 

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前座のバンドは既に歌っていた。インディー。

 

空いた車庫の中が木で打ち付けられていて、ステージも設置されている。

 

ちらつく電球の飾りも散りばめられており、

 

それに照らされる人の横顔が酒のせいか、より火照って見える。

 

人と人との距離が近く、既に皆ハイな様子。

 

僕も端っこにあったソファに座って一緒に来た他の四人と寛いでいると、

 

イケイケのバンドメンバーらしき人が車庫にぞろぞろ入って来た。

 

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空気が変わった。

 

会場入り、盛大な喝采が浴びせられる。

 

どうやら、パーティ参加者のほぼ全員はこのバンドを知っているらしい。

 

よく見ると、シャムがステージの前の方に座っている。

 

人混みの壁に隠れて見えなかったが、インドの太鼓と一緒に座っている。

 

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手間の坊主の彼がシャムだ

 

 

車庫の中の装飾の光が一気に強まった。眩しい。

 

ドラムのダダッという合図で他のギター、ベース、キーボードが一気に演奏を始める。

 

チューニングなどはない。ボーカルがいるから、それと演奏に合わせていく様だ。

 

それにしても、曲の雰囲気が、ファンクなのか、R&Bなのか、またはソウルなのか分からない。

 

ピヨーンとうねる様な音のギターとベース、それにホワホワした音を出すキーボード。

 

対して、パンチの効いたボーカルのラップとドラムの律動。

 

インディーバンドなのだろうが、今までに聞いたことのないようなメロディー。

 

その時の様子がこちら。

 

 

後から彼らに訪ねると、

 

彼らはその音楽の範疇を"パンチファンク"と呼んでいた。

 

力強いけど、心地のいい音の繋がり。

 

これは、お酒が入るとやばそうだ。と構えていると

 

自分の手にはいつの間にか、現地の格安カクテル、"Mike's" が握られていた。

 

酒も回り、音が体の深部まで響いてくる。

 

気付くと僕は、人混みの最前列に肩を並べ、

 

最後の曲が終わるまで、隣同士の人たちと肩をぶつけ合った。

 

ドラムソロ中、彼の周りの電飾を腕と体に巻き込みつつ演奏を続ける様子は、今でも忘れられない。

 

↓バンド "Bunk Foss" のドラムソロの様子

 

 

気付くと、セットリストに在った曲がすべて終わり、ひと段落着いた様だ。

 

・・・あれ?

 

シャムが演奏していない。

 

彼に誘われてきたのに、彼のインド太鼓、タブラの音色をまだ聴いていない。

 

バンドは車庫の出口へ歩き始めるが、シャムはステージに残っている。

 

「どういうことだ?」

 

動揺している僕には関係なく、観客の拍手は鳴り止まない。

 

僕も形振り構わずその拍手に加わり、しばらく待っていると、

 

このアンコールに応じたバンドメンバーが戻ってきてボーカルがマイクに向かって一言、

 

「今日は俺の大切な友人が来てくれた」

 

「もう一曲、ここに座っている彼、シャムと」

 

それを聞いて僕はここでようやく理解した。

 

「彼はスペシャルゲストだったのか」

 

「誘い方からして、自分もバンドの一員の様に言っていたじゃないか」

 

そんな愚考を頭に巡らせている僕には構わず、

 

シャムのソロから曲が始まった。

 

なんだこの音は。

 

踊り狂っていた観客も、目を丸くしつつ、

 

口角が上げられた口をそのままに、彼を見つめる。

 

タージマハールの迷宮に迷い込んだ様な、

 

異邦人を彷彿とさせるゆらゆらした太鼓の音が車庫内に響き渡る。

 

二つある太鼓にそれぞれ五本の指が置かれ、

 

不規則にその指が波打ち、細かく連続して鳴る突発音が一くくりに縫い付けられ滑らかな音の羅列を生み出す。

 

表現し難い音だが、それはこの下にある動画を見てほしい。

 

 

 

彼のソロが終わり、数秒沈黙が続いた。

 

今日一番の歓声と拍手が巻き起こり、それに合わせてバンドメンバー全員が同時に演奏を始めた。

 

彼の太鼓の音が他の楽器の音に少し掻き消されてしまっていたのが少し残念だが、

 

彼の一曲にして観客全体の一体感を生み出す力には驚いた。

 

曲が終わり、車庫を埋め尽くしていた踊り狂う人々がまるで

 

「やり切った、これで満足」という様な項垂れた様子で、

 

車庫の隣にある、主催者の家だろうか、3階建ての一軒家にぞろぞろと歩みを進め始めていた。

 

その横で僕とノアは、演奏中最前列で彼を直視していたので興奮状態。

 

まるで有名人に出逢ったかのようにステージの上で記念撮影をお願いしていた。

 

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彼のファンになりました

 

人の隠された一面を見るだけで、こんなにも印象が変わってしまう。

 

大麻とジョークが大好きベジタリアン

 

という印象が

 

「指の魔術師タブラーマスター」

 

へと変わっていた。

 

演奏後、駐車場で彼がアブドゥルと大量に大麻を吸っているのを見ると、

 

ああ、これがアーティストのオンオフか、

 

と納得がいってしまった。

 

 

ひと段落着き、車庫内また同じソファーに座って寛ぐが、

 

一緒に来た他の四人もお酒が入り、興奮が冷め止まない様子。

 

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まだソワソワしてしまう。

 

車庫の横、一軒家の方には向かわず(知り合いがいないので)

 

車庫内に残る。他にも何人かいる。

 

その内の一人、だいぶハイになっている男性が

 

車庫内の物置スペースにあったドラムを見つけ叩き出す。

 

その周りの連中も、そこらに落ちている廃材を叩いて後に続く。

 

リズムが生まれてきた。

 

ノアも持参のギターを持って、輪に入る。

 

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打楽器が多い。

 

一人、インディアンの長い管楽器、太く深い音のなる楽器を持参しており、

 

それを息一杯に吹き鳴らす。

 

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竹の様に長い。

 

色々な音が更に加わっていき、僕も興奮してカメラを回す。

 

その時の様子がこちら。

 

 

腰を低く、揺れない様にカメラを回していると、

 

隣から40代くらいのおじさんが声をかけてきた。

 

「元気ですかー」

 

日本語で声をかけてきた。 それにとても大きく荒げた声で。

 

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彼はハーモニカを持参。

 

どうやら、僕の容姿から日本人だと判断し、話しかけてきたようだ。

 

そんな彼の名はマイケル。

 

昔、沖縄の米軍基地に数年滞在しており、その時本当にいい経験をしたようで、

 

彼が基地に滞在していた当時流行っていた中島みゆきの「糸」?を日本語で歌ってくれた。

 

他にも懐かしいメロディーを含んだ、歌謡曲風の曲をいくつか披露してくれたが、

 

僕は知らなかった。

 

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大分近づいていますね。

 

こうして、

 

人生初めてのアメリカン?なハウスパーティが終わった。

 

文化的違いからも色々と衝撃的な経験が多かったけれど、

 

一体感の中に見られる個性が輝きそれをその場の全員が噛みしめるかの様な、

 

瞬間に身を投じるその姿勢がとても居心地が良かった。

 

数時間、体を揺らしながら音楽を聴いたのはいつぶりだろうか。

 

足がパンパンだ、帰ったら軽く汗を流して、よく寝よう。

 

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帰りの車、爆睡。サム、運転有難う。シノ、遠くまで有難う。